バンドレビュー Vol.4 北欧の暗黒神 OPETH
- 奥田ゾンダーランド
- 2021年8月4日
- 読了時間: 35分
国:スウェーデン ストックホルム県 🇸🇪
活動年:1990-
ジャンル:プログレッシヴデスメタル、プログレッシヴロック(後期)
アルバム数13
コンセプト:霊界、廃墟、ノスタルジアな世界などなどおどろおどろしい印象が強い
プログレを愛する男ミカエル・オーカーフェルトによって成り立っているバンド。メロディックデスメタルというジャンルに凶暴性と芸術性や哀愁を混ぜ合わせま唯一無二のプログレッシヴデスメタルというジャンルを確立させたバンド。静と動の使い分けが凄まじいのも特徴でとにかく一曲一曲が長い。
プログレが好きな人、普通のメロデスに物足りなさを感じた人、未知の芸術世界に足を踏み入れたい人におすすめしたい。最近は脱メロデス化をし、プログレッシヴロックバンドになっているが彼ら特有の深化を今なお遂げている。
ジャケット☆☆☆☆☆
技術☆☆☆
哀愁☆☆☆☆☆
安定感☆☆☆☆
ネームバリュー☆☆☆
個性☆☆☆☆☆
ジャケットの特徴
退廃的な絵画や白黒のノスタルジックな写真、心霊的なものが多い。後期は宗教画チックなものが多い。
メンバー
ミカエル オーカーフェルト V/G ☆

出典: https://images.app.goo.gl/Cwt97nrmu9YotMZz7
バンドの中心人物。というかオーペスの本体。彼が抜けたら一瞬でオーペスは崩壊すると言っていいほどだ。全ての曲を作詞作曲し、ギターヴォーカルを務めている。狂気と哀しさが入り混じるデスヴォイスと美しくダークなクリーンヴォイスを使い分けることができる天才。

出典: https://images.app.goo.gl/qwVyyYr71KgPGZyv6
言い方悪すぎだがその他のメンバーは空気なのでこの画像でお許しください。(ごめんなさい。。)
第1期
オーキッド ☆☆
モーニングライズ ☆☆☆
曲が長く、プログレッシヴな要素も多いがこの時代はメロデスという感じもする。音質が悪くどの曲も未完成感が凄いが、この時代から心を掴むメロディが所々に散りばめられている。
第2期
マイアームス ユアハース ☆☆☆☆
スティルライフ ☆☆☆
ブラックウォーターパーク ☆☆☆
デリヴァランス ☆☆☆
ダムネイション ☆☆☆
プログレッシヴデスメタルという未知の領域に足を完全に踏み入れスタイルが確立された黄金期。凶暴さと哀愁のバランスが凄まじい。5作目ブラックウォーターパークで商業的にも成功し、世界に名を轟かした。
第3期
ゴーストレヴォリース ☆☆☆
ウォーターシェッド ☆☆☆☆
キーボードが加入し、パワーやインパクトは以前に比べて少し減るも芸術性が増した時代。
第4期
ヘリテイジ ☆☆☆
ペイル コミュニオン ☆☆☆
ソーサレス ☆☆☆
イン カウダ ヴェノム ☆☆☆☆
デスヴォイスを完全に封印し、プログレ路線に舵を切った時代。あまりにも大きな変化のため多くのファンが困惑するもの、誰もが真似できない唯一無二の孤高の存在となった。彼らの深化と芸術の追求は誰にも止まらない。
世間一般のアルバムおすすめ順
わからない....
私のおすすめアルバム順
9th>3rd>13th>8th=5th=4th=2nd>7th>12th=11th>10th>6th>1st
作曲スタイル
超天才ミカエルオーカーフェルト先生が1人で全部やってます。
私とオーペス
中学時代のメタル好きの理科の先生が勧めてくれたのがきっかけ。当初は曲よりもジャケットに惹かれた。
1st Orchid (1995)
31点

デビューアルバムからオーペス全開の複雑で凶暴で芸術的な曲が並ぶ。しかし1stということもあり、曲構成が少々雑に感じてしまい、印象的なメロディーが少ないのが残念。夜のイバラまみれの迷宮という感じの曲が多い。
おすすめは1、2、3、5、6
1.In Mist She Was Standing A
2.Under the Weeping Moon A
3.Silhouette A
4.Forest Of October C
5.The Twilight Is My Robe A
6.Requiem A
7.The Apostle In Triumph B
8.Into The Frost Of Winter (ボートラ)
#1はいきなりの14分超えの大曲。だれるが後半のツインギターのハモリが哀愁あってよし。
#2は怪しくも味のあるアコギインストから始まる10分ほどある大曲。中盤のアコギの病的なパートが凄まじさを感じる。
#3ピアノのみのダークで美しいインスト曲。この一曲聴くだけでオーペスがどれだけ他のバンドとかけ離れた存在かわかるはず。
#4は少しインパクトが弱めの長い曲。もう少しかっこよさや哀愁あるメロディが欲しかった。
#5はこちらも11分と長い曲だがこのアルバムの中では1番クオリティが高い曲。グダるパートが少なく哀愁溢れるメロディが散りばめられている。静と動の使い分け方はこの時代からうまい。
#6はインスト。こちらも美しいメロディを奏でているを
#7はフォーク調のアコギで始まる10分超えの曲。3分くらいまでヴォーカルも入らない不思議な曲だ。展開が唐突で持ってる全てのメロディを強引にぶち込んだ感もある。
歌詞
秋の空の下、7つの道標にて...
湾曲した木々が風のメッセージを伝えている 彼女の影が霧の中立っていた 夜明けを待つ夜のように俺を待っている 闇の蝋燭だけが明かりとなる 彼女の冷え切った手の中で、蝋燭は燃え尽き、見放された魂として消えていく 霧が黄昏を包み込み彼女は消えていった...
陽炎のような瞳は明星の如く光り輝く 冬の刻印を燃やしながら 泣いている月の下、俺は笑っている
俺の心は朝日と共に影を落とす 森の鳥達は冷たく光る空へと羽ばたく 永遠なる海から這い上がるも、双方の岸は闇のベールで覆われていた 2度と自分に太陽が昇らないと確信した俺は静かに眠る10月の森を後にする
太陽の鳥が黒雲を切り裂き、冬の風となる
冷え切った夕暮れの中、影に火をつけながら満月が堕ちるのを待つ 波は今でも古の子守唄を囁き続ける
森の中、狼は月に向かい苦悶の遠吠えをあげる 降り続ける雨は俺から涙を奪った
2nd Morning rise (1996)
58点

曲数は少ないが全ての曲が10分ごえという異色作。作風は前作とは変わらないが、今作では一つ一つのメロディーに哀愁が込められており、心打たれる瞬間が何度も来る。幽玄メロデスって感じか。何よりジャケットが良く、こういう場所あるよなーとしみじみ思える。ただベースの音がカエルみたいで笑える。曰く付きの事件が昔あった池という感じの曲が多い。
おすすめは全曲
1.Advent A
2.The Nigth And The Silent Water S
3.Nectar S
4.Black Rose Immortal 特A
5.To Bid You Farewel S
各曲レビュー
#2はとにかく哀愁メロディで溢れた名曲。途中のアコギのセンスには脱帽。
#3こちらも前の曲同様心打たれるメロディが多い名曲。イントロから3分あたりまでが凄まじい。
#4はオーペス史上最も長い曲で20分以上ある。前半はややダレるが中盤からラストまでの流れの邪悪な美しさは見事。
#5はアコギから始まるバラード風の曲。ラストにふさわしくこの曲も好きだ。
歌詞
葬列は行進をし、永遠の夜が訪れた
俺は静かに凍る夜の中歩き回る 唇は理由を口にしようとし、この低湿地に順応しようとする 折られたメッセージは俺の名を泣き叫んでいた 欠けている頁を書くための言葉を汚れた教義の中から探す 笛吹は今日もお前の時の中で歌う そして空虚の中へ躍りながら進んでいくのだ
ある9月にお前は俺たちを置き去りにした 悲しみの月が暗い低地を照らす 月を映す湖は孤独な遺物と化す お前の顔は写真と同じように白く塗られていた
秋に覆われ、ぼんやり見える星の動きを眺めている お前は光の中で眠る 今日も静寂の溜池は暗い
三日月の子守唄から目覚める 空虚の影を運ぶ俺を、お前の歪んだ迷宮へ導いてくれ 罪の井戸を月光が差し込む 夜明けに朝が消える前の名残の中で、瞳が赤白く反射していた それは野原の中、微笑むお前だった
いつの日も探し求めている昼と夜 月明かりは囁きほどの静けさで孤独な丘を愛撫する
お前は見知らぬ果樹園へと入っていく
2人で影の中を歩くその時、不死の黒い薔薇に火が放たれやがて消えるだろう 畑の上をすり足で駆け巡る夕暮れ時 夕方の木々は分かっているかのように呻く 夜はいつもお前の夢をみていると、、
朝日を待つ この極寒の朝を虚な目で眺めている 降りしきる雨の中、愛情を避け悲しみの中、俺は夜に向かう
3rd My arms your hearse (1998)
63点

前作に比べ全ての曲がコンパクトになった印象があり、曲調がアグレッシブになった作品。地味だが、意外と聴きやすく今後のオーペスのスタイルを確立させた作品ともいえる。デスボイスに勢いがつき狂気感も増した。静と動が一斉に襲いかかってくるような夜明けの林が表現されているように感じた。曲の終盤の歌詞に次の曲のタイトルが入るようになっている面白い作りだ。コンセプトは一応ある。彼女の葬式から始まり、彼女の霊を追い求める哀れな男のお話だ。ライナーノーツでその辺のこと全然説明してくれなかったからよくわからんが多分そんな話だと思う、、。
おすすめは2、3、5、6、7、8、9
1.Prologue B
2.April Ethereal S
3.When 特A
4.Madrigal B
5.The Amen Corner A
6.Demon Of The Fall 特A
7.Credence A
8.Karma A
9.Epilogue A
各曲レビュー
#1 美しくも悲しいインストから始まる。雨の音が幻想的だ。
#2 アグレッシヴだが全パートがダレず美しさがある曲。不気味なイントロ、クリーンヴォイスパート、間奏、そしてひたすら繰り返してくるアウトロ、とオーペスの魅力が詰まった名曲だ。
#3 こちらもオーペスらしい静と動のメリハリがよくついた曲だ。劇的な展開が目立つ曲だが少し繋ぎが強引な気もする。
#4 怪しくも美しいインスト曲。
#5 重々しい曲だが、聴けば聴くほど良さが出てくる。中盤など良いメロディがある。ただこのアルバムの中では一番印象が薄い。
#6 6分とオーペスにしてはえらく短い曲だがオーペスの全てが詰まっていると言える名曲だ。邪悪さと美しさのバランスが素晴らしい。終盤哀愁クリーンヴォイスで畳み掛けてくるところが超越している。
#7 ワルツ調のアコギの静寂バラード。ここでこの曲をぶち込んだことでアルバムの良いアクセントになっている。途中でメタルパートを挟まず終始「静」だったところにも成長を感じる。
#8 こちらも荒々しい曲だが中盤から後半にかけてのアコギパートからのアグレッシブパートへ移るところが光ってる。
#9 ラストは哀愁エレキのインストだ。終わりにふさわしい曲だ。
歌詞
俺は4月の火の中を亡霊のようにうろついていた 彼女の葬儀の後に押し寄せる空しさ 雨が別れの手を振り夜が訪れると森は俺に枝を巻きつけた。どうやって、なぜなのか、いつになるか分からない、、影となり夢から這い上がろうとする彼女に言えるのはそれだけだった。
濃霧の中から赤い朝日が昇ろうとしていた
見せ掛けの霊妙な風が通りぬけ、花園の花々は枯れていく 今日も門は閉ざされた 遺影は笑顔に語りかけてくるが、窓から見える真顔の君は俺の名を囁くのみ いつになればお前をここから連れ出せる 新しい始まりはいつからだ?この悲しき詩「マドリガル」は終わりを告げていた
白い夏 俺はまたここに戻ってきてしまった
彼女の干上がった井戸のような瞳は、青白くなった思い出を語りかけてくる 眠りから覚めると月は背を背け、暗く長い夜の序曲が始まる 俺の命は今墓にある お前の夜は俺の昼間だ 俺に命を吹き込んでくれた最後の火花は彼女ではなく、墜落の悪魔だった
秋が訪れ、全てが引き裂かれた 偽りの愛情が純粋な憎しみへと変わる 風は悲しみに泣き、そして灰色と化した
また置き去りにされ夜に捕まった お前は影を通して俺に語りかけてくる 閉ざされた部屋の中で俺は隅に押し込まれていく 魂の碑銘を確認した俺は冷え切った言葉を土に映す
部屋にはもう誰もいない 真夜中の林道、地面に垂れ下がった木々の枝 この森には再び、不変の運命に包まれた冬のエピローグが訪れるだろう
4th Still life (1999)
55点

この辺りでオーペスのスタイルが完全に確立されたように思える。前作のように凶暴さと美しさが上手く合わさった作品となっている。前作よりも、さらに攻撃的になってはいるが、どこか香水がかかったようなオシャレさや妖しさもこの作品からは感じ取れる。マリンダという恋人に会うために故郷を追われた罪人が帰ってくる話で最終的に2人とも死んでしまう悲劇的な物語がこのアルバムに収められている。(大雑把で申し訳ない)
おすすめは1、2、3、4、5、6
1.The Moor 特A
2.Godhead’s Lament 特A
3.Benighted A
4.Moonlapse Vertigo A
5.Face Of Melinda S
6.Serenity Painted Death A
7.White Cluster B
各曲レビュー
#1 アコギから始まりもすぐさまオーペスワールドに入り込む曲だ。アグレッシヴでもあり美しい前作ちっくな曲だが、曲調が物語を描いているような作りで進化を感じる。サビのクリーンヴォイスやアウトロなど聴きどころがたくさんある。
#2 こちらもいろんなパートが存在する長い曲だが、展開の仕方は過去最高レベルにかっこいい。荒れ狂うパートから、クリーンヴォイスターン、ギターソロ、中盤のアコギワルツなどどこを聴いても一級品ソングだ。
#3 終始綺麗なアコギが聴ける物悲しいバラードだ。味があって良い。
#4 イントロの哀愁メロディから殺しにかかってくるアグレッシヴな曲だ。狂気パートとシャレオツクリーンヴォイスパートが交互に来るタイプの曲で質は高いが少しダレてしまう。
#5 アコギの神イントロから幕を開ける妖しさが漂う名曲だ。感情の入れ方が上手い。後半はエレキが入り攻撃的になるところがまたかっこいい。
#6 アグレッシヴ色が濃いトラックで序盤の暴虐的なパートとラストのアコギメロディがいい。所々オシャレなギターソロなども入るが少しダレてしまう。
#7 これもオーペスらしい凶悪ソングだ。印象にあまり残らなかった曲だが、聞き直しがいがある曲だ。
歌詞
青白く灯る松明の残り火が身を振り、湿ったぬかるみが私の目のうちで燃える 教義と共にある放浪者は遥か下方へと追いやられる 彼らの眼差しに許しなどない ただ1人、例外がいた 今、霧が晴れる メリンダこそ私が帰ってきた理由 彼女は薪の向こうの滴であり、手の中にある薊の花 その姿は高潔にして、心は無垢であった
汚れた大地の静寂の只中、同胞への愛が終わる 石積みの道に手彫りの死が横たわる 私は過去の傷跡を隠すも、それでもまだ無音の哀歌が滲み出る 虚ろな神は私の名を引き裂く 失われた美徳、気も狂わんばかりに熱せられた欲望に駆られ私はここに留まると決めた
あなたの視界は捻じ曲げられ空を駆け、あなたは途方に暮れる あなたの孤独な魂と共に罪滅ぼしが出来るなら、あなたはこの夜の中にいる
カンテラの火は今夜の全ての視界を奪う 崇敬の跡は残らず彼らの眼には遥か過去の炎が宿る 終末へ向かう蒼白な逃走の中、私は目を背ける
私は彼女の手を取り言う 永遠の信念など洗い流された 私はあなたのために大いなる不安の中、戻ってきた 私と一緒に来てくれ、遠くへ行こう 夜の只中、終わり無き見詰め合い 彼女は自分の悪徳を話し韻文を崩すも最後の行で心は挫ける
冬の夢からの帰還 メリンダの首の周りの赤い線は静寂の中、大地に沈む 月と共にくる意識の気まぐれ 壁の上の影が星に照らされる
私はあなたの元へと這って進む 見た目は疲れ切り擦り切れた私のために彼らは白装束を着る 首吊りの縄が結ばれる マントに覆われ安堵の溜息がようやく出る
5th Blackwater park (2001)
54点

商業的に大成功した作品でもあり、一気にオーペスの名を世に知らしめた。更に凶暴化し、前作のオシャレさは消え切なさとおどろおどろしさが増した。相変わらず曲構成が複雑な上に攻撃的な曲が増えたため、少し疲れるが、より手法が多彩になり良くできた作品。一聴するだけで周りが枯れた森に囲まれた気分になれる魔力を持つ作品で聴いてるだけで病気に感染しそうになる。
おすすめは1、2、3、4、5
1.The Leper Affinity A
2.Bleak 特A
3.Harvest 特A
4.The Drapery Falls 特A
5.Dirge For November 特A
6.The Funeral Portrait B
7.Patterns In The Ivy B
8.Blackwater Park B
各曲レビュー
#1 7割が狂気、残りの3割が美というオーペス黄金比曲。デスメタル色が濃いが所々ギターソロやワルツパートなど心をエグってくるメロディを散りばめられているかっこいい展開を見せてくれる。ラストのピアノも美しく素晴らしい演出だ。
#2 こちらも攻撃的なリフから始まる曲だがサビはキャッチーなクリーンヴォイスで魅せてくる。途中にオシャレなアコギが入るところなどオーペスらしさ満載でありながら聴きやすいまとまった曲なのでシングル盤とかで出せそうな雰囲気。
#3 ワルツ調の邪悪で哀愁あるバラード。アコギとクリーンヴォイスが凄まじい。
#4 イントロから殺しにかかってくる哀愁デスソング。全てのパートが哀しくこのアルバムの核だと思っている。他の曲よりもドラマ性があって黒水園の世界に、1番引き込まれる。
#5 邪悪な曲だがこちらも哀愁があってカッコいい。オーペスの曲にしては珍しく展開が少なく、たったの3パートしかない。序盤の悲壮感溢れるアコギパート、中盤のデスパート、そして終盤は鬱的静寂パートという作りになっている。展開が少ない分逆に落ち着いてアルバムの世界に浸れるため好きな曲の一つだ。
#6 終盤のクリーンヴォイスパートは神がかっているがそれ以外がいまいち印象に残らない全体的にだれてしまう曲だ。不可思議な音回しは実にオーペスらしい。
#7 インスト曲。ラピュタの城を彷彿とさせる廃墟っぽい綺麗で寂しい曲。
#8 ラストは12分にも及ぶ凶悪デスソング。
美しさはないがラストにオーペスでは珍しい疾走もみせてくれる。途中の長い長い静寂パートは賛否が分かれそうだ。
歌詞
俺の罪を跡を辿ったお前は我が信条のもとの奴隷であり、その涙で俺を駆り立てる 殺人を芸術へと引き込み、昼の間はその絵画の中で眠れ 失われし春の日々 耳を聾する悲鳴が夜をつんざいた 忘却まであと1歩 淡い光へと入り夢想の中で一夜を過ごす
心臓はまだ大義のために鼓動し糧となる 魂はまだ喪失から糧を得ている 夜明け、冷気がいつまでも残り太陽が悪夢へと誘う
精神が罪を描いた 俺の肌の下の名残 門の先を見つめながら果樹園の中へと俺は歩いていく 待ち切れなかった俺たちのための意気阻喪した光景 最も冷たい愛撫に消耗し、行く手の影に忍び寄る 死の光輪、俺に見えるのは出発点のみ 会葬者の嘆き、殉教者は俺だ
お前の閑居の静寂はお前の語ること全てに夜を持ち込む 俺は夜の時間を数えている 取り憑かれた眠りの中の溺れゆく幻影 地面に螺旋を描き落ちていく 秋の葉のように次第に色あせお前の音にまた覚醒する
予兆は示していた 道に迷い、ここはどこかもわからない それでも家を探している 単なる反射が嫌悪をもたらした
雨があらゆる罪をきれいに洗い流してくれる 開かれた蜃気楼はお前の感覚を静める
我らが出会う時、喜びの核を固く握りしめ我を恐れよ
永く失われた者への最後の臨終の呼び声 倒錯が狂ったように現れ探求者たちは探索のさなかに迷い下弦の月のもとで、友の亡霊が遊び戯れる それは死の年、人知れず君臨する死神はたやすく我らに触れていく 俺はただの傍観者、喪失を立証する代弁者 だが俺にとってはどうでもいい それでも弔いの鐘は遠く死別をあざけっている 病的な関係がこの不朽の指標を上げた 2度と昇ることのない太陽はブラックウォーターパークに沈んでいく
6th Deliverance (2002)
43点

作品を重ねるごとにアグレッシブにもなっていくオーペスだが、今作での攻撃性はおそらくピークに達し、最も激しいアルバムになっている。次作のダムネイションとは対極にある双子作であり、そちらはデス要素ゼロのバラードアルバムとなっている。芸術的要素もあるが、とにかく複雑な展開をみせる激しく長い曲が続くので人によってはキツイアルバムかもしれない。1曲を短くして曲数を増やせばまた違ったかもしれない。リーダーのミカエル曰く、前作で商業的成功を収めたことで反骨精神が生まれ、商業的成功を敢えて狙わず、自分たちの音楽を追求するため実験作を今回持ってきたかったらしい。そんで生まれたのがこれ。なるほど。売れ線狙いに走らず、ファンにも媚びない彼らはやはりかっこいいな。しかし、ミカエルは今になってこの作品は失敗だったと嘆いている(笑)
今までのオーペスを暗い絵の具の絵画と例えると、今作は用紙に鉛筆で殴り書きした感じ。
おすすめは2、3、6
1.Wreath B
2.Deliverance A
3.A Fair Judgement S
4.For Absent Friends B
5.By The Pain I See In Others B
6.Master's Apprentices 特A
各曲レビュー
#1 凶悪ソングから幕をかける。とにかくアグレッシヴだが所々胸を打たれるメロディも存在する。渦のように展開していく曲だ。
#2 続けてブルータルソング。こちらも激しいが全体的に中毒性で溢れている。クリーンヴォイスパートもあるが美しさはなく淡々としているとこが特徴的。とにかくアグレッシヴだが4分ある変拍子の邪悪なアウトロの威力が凄まじい。
#3 今作では一番好きなダークワルツバラード。イントロのピアノから美しくも鬱の世界に引き込まれる。絶望的哀愁を味わえる。
#4 静かなインスト。突然癒しソングでびっくりする。ニンテンドーが作りそうな曲だ。
#5 デスヴォイス全開凶悪ソング。前半は少しダレるが後半お経クリーンヴォイスからアコギ〜アップテンポギターソロの流れはさすがはオーペスと言える。
#6 こちらは変化球がよく聞いた不思議なデスソングだ。イントロがキャッチーかと思いきや、すぐにドロドロオーペスターンに入る。中盤哀愁パートからのワルツパートに入るとこがこの曲の最大の聴きどころであり癖になる。ミカエル曰くもう少し詰めることができた曲だとのこと。
歌詞
聞き慣れた子供達の笑い声は不調和で不自然な音と化す 水溜りに映る自分の顔は亡霊の仮面をかぶっていた
死はおとぎ話に過ぎない ただの視覚に過ぎない もう言葉は残されていない 唯一の供給者の死によって俺の信念は歪められた 漆黒のページが開かれ、夢に捕われた歪んだ知覚が現実となる
俺がお前を海の中に沈めている間に教えろ お前の心は何を求めているのかを 夜の陰の中、永遠に終わらない螺旋階段を下り、罪の中へと入り込む 悪魔祓いの祈りは跳ね返され、俺を嘲笑う
眠りを失う 魂は犠牲となり、忠告は忘れられた 時間を忘れ、煙の渦の中、公平審判のために苦悶を待ち続ける
俺を呼ぶ声 明けていく1日 俺を待つ季節 曲がりくねる道 未だに燃え続ける炎
俺が依存する自由 俺が夢見る人生
少しの時間息を止め、消えて行った希望のために不在の友人を想う 和らいだ瞑想の中、色あせ消えていく天空の光は俺を導く
今までになく震え、花は既に萎れた この終わりなき魂の冬の中で
公園の外で日々は流れる そして何も変わらない
7th Damnation (2003)
51点

前述した通り、今作では初の全曲クリーンボイスのバラード作品。デスが嫌いな人でも今作は美しく切ないオーペスの曲を誰でも堪能できる。ツェッペリンやキングクリムゾン、キャメルなどの影響も随所にみられる。今作と前作で寄り道をしたおかげで作曲の幅が広がり、次作で得られたものを爆発させている。
どの曲も窓から小さな風が吹きカーテンが揺れる感じの切なさと温もりの両方が伝わる哀愁のあるアルバムだが、少しあっさりしすぎている感もある。
おすすめは1、2、3、4、5、6、7
1.Windowpane A
2.In My Time Of Need 特A
3.Death Whispered a Lullaby 特A
4.Closure A
5.Hope Leaves A
6.To Rid The Disease A
7.Ending Credits A
8.Weakness C
各曲レビュー
メロトロンを駆使した渋くて美しい曲だ。
やはりオーペスは音楽の調理の仕方が洒落乙である。
サビの歌メロが泣けるパワーバラード。相変わらず美しく切ないがシングルでも売れそうなわかりやすい曲だ。
少し不気味さもあるがそこが癖になる曲。退廃的な美を感じられる。
#4.
哀愁アコギ歌メロから始まるも後半になるにつれ摩訶不思議プログレッシヴ色が強まっていく曲構成が面白い。
スーパー癒し哀愁バラード。子供時代遊びに行った今は無い家のことを思い出す感じの雰囲気だ。
悲しさマックスな曲。鬱の時に聴くと死にたくなるような曲だが、ピアノワルツパートから先の展開が劇的で非常に美しい
インスト曲。落ち着いたエレキが奏でるメロディがグッとくる。ただ少し演歌っぽい?笑
クリーンヴォイスで静かな曲だが、不気味でどこかダーク。最後は鬱の渦で終わる。
歌詞
窓ガラス越しの無表情な顔 一瞬の光に照らされ消えてはまた映し出される 時間を数え、夜を待つ 心で奏でるララバイ 縺れた声が子供達の泣き声の中に響く 与えられた夢は痛みを伴い、失われた過去へと映し出される
夏は遥か彼方 俺が救いを必要とする時に今死を選び、喜びと悲しみがあてもなく頭の中を巡っていく 心は死を思い、俺は魂の奥底から引き剥がされる
蛍が円を描いて飛んでいる 草木生い茂る森の奥で、迷える魂が身を潜める場所で丘の向こうには、心の平穏を求め帰ってくる人々の群れ 深い霧の中に動く影 暗闇の中で目蓋は閉じていく 風に舞う砂の下に生き埋めにされた 扉を開ければ月は落ちて行くだろう
絶望の中で願い祈り続ける 太陽の光の中では俺は暗闇を思いこがれる
部屋の隅にある窓の隣に飾られた写真 理由などない 思い出に引き止められていることに俺は気付いていなかった 語ることなく日々が過ぎ去った 静寂の中に安らぎがある
この病を取り除くための潔白は引き剥がされた そして死産した、お前の中の信念 この失敗は創造者を生み出した
瞬きの中にお前を見つけた お前が恋しい 数千もの夢の中へと背を向けて旅立った 真実の時間の中にお前を失った 破壊への贈り物として、たった一つしかない心を捧げてしまった
8th Ghost reveries (2005)
56点

5thのようなバランスの取れた作品に戻ったオーペス。この作品からキーボードが入り、表現が少し多彩になったため荒れ狂うリフの嵐のアグレッシブさよりも怪しさや4thのような幻想感が増した印象が強い。より複雑化され即効性は薄く聴き込みが必要だが良い作品だ。4、6、8など美しいバラードありメリハリがついているため聴き疲れることもない。
今までは室外というイメージが強かったが、6thあたりからは室内感が強い。ロウソク一つで暗い朽ちた洋館を徘徊する感じの曲が多い。
おすすめは1、2、3、5、6、8
1.Ghost Of Perdition 特A
2.The Baying Of The Hounds A
3.Beneath The Mire B
4.Atonement A
5.Reverie/Harlequin Forest 特A
6.Hours Of Wealth A
7.The Grand Conjuration B
8.Isolation Years 特A
各曲レビュー
#1 この曲を聴けばプログレッシヴデスとは何かわかるってくらいの名曲だ。暴虐と芸術の極みであり、構成も素晴らしい。
#2 即効性はないが魅力ある曲だ。凶器的アグレッシヴパートから始まり、オーペスらしい魔力あるパートも中盤ぎっしり入っている。ギターソロもかっこいい。しかしどこか1曲目と比べると忙しい展開にも思えてしまう。もう少しまとまりがあれば神曲になれていた。
#3 怪しいキーボードのイントロが印象的な曲で前2曲と似た作りの曲。序盤はアグレッシヴなデスヴォイスが聴け、中盤は静寂パートでやはりここらへんは美しい。終盤暴虐パートに戻りギターソロで締めくくる質の高い曲だ。しかし何度聴いても2曲目とごっちゃになってしまうところが欠点か。。
#4 こちらは不思議なオリエンタル調の曲。歌が入った途端芸術的で幻想的になるところはさすが。
#5 途中までは神で後半から終盤がゴミな曲だ。前半の歌メロやギターソロはツボで中盤も良いメロディがあるのだが、後半のグダグダ手抜き具合に「やる気あるのか!!」と思わず喝を入れたくなってしまう曲だ。
コンパクトにまとめられれば殿堂入りできた曲で非常に勿体無い、、。
#6 前作にも入っていそうな芸術的なバラード。イントロから幻想世界に引き込まれる。
#7 アルバムで一番凶悪な曲でアグレッシヴだ。10分以上ある曲なのに終始攻撃的な曲調なのも特徴だ。この曲をPVにしたりシングルで出した彼らはやはり凄まじい笑
#8 ラストにふさわしいダークバラード。こういう曲をやらせたらピカイチなのだが7曲目と少しかぶってしまう印象
歌詞
対訳がゴミすぎて修正が不可能なレベルであったため載せません。
9th Watershed (2008)
60点

今作も前作の延長線上だが、ほんの少し曲がまるくなり、クリーンヴォイスパートも大幅に増えており、初心者に聴きやすい内容となっている。しかしブラスト全開の曲もあり、凶暴性も決してなくなったわけでもない。芸術面では進化を遂げたが、どこかまとまってないような印象もある。前作が夜の廃墟だとすると今回は昼の廃墟という感じ。
おすすめは全曲
1.Coil A
2.Heir Apparent A
3.The Lotus Eater A
4.Burden S
5.Porcelain Heart 特A
6.Hessian Peel 特A
7.Hex Omega
各曲レビュー
#1 ゆったりしたアコギの曲からこのアルバムは始まる。女性ヴォーカルが入ったりと不思議な雰囲気の曲だが中々いい。
#2 重々しさがあるダークなデスメタルソング。終盤哀愁溢れるメロディもあるが全体的に弱い。
#3 ブラストから始まる凄まじく破壊力のある曲。序盤の爆発力は素晴らしいが後半が少し空気なのが惜しい。中盤の静寂パートの先にプログレッシヴな摩訶不思議パートがあるが、今聴くとこの部分のみ10th以降の脱メロデス化したオーペスに通ずる何かを感じる。もう彼らはすでにこの時点でプログレッシヴロックバンドにシフトチェンジしたかったようにも感じる。
#4 美しいピアノから始まる名曲バラード。クリーンヴォイス、途中のギターパート、全てが哀愁の極みでダレる箇所が1秒もない最強ソング。ラストの不協和音になっていくアコギもオーペスらしい世界観で好き。
#5 序盤の怪しいアコギが癖になる。暗黒面と絶望感溢れる静寂パートを交互に畳みかけてくる他のバンドでは聴けないような名曲だ。
それにしても今作はクラリネットの使い方が上手いな。
#6 イントロを含め前半は芸術と哀愁の嵐、中盤は凶悪デスパート、後半はプログレッシヴパートも姿も見せラストはアグレッシヴに幕を下ろすThe・オーペスな曲だ。笑 オーペスの魅力が詰まっていて、前半は感動するクオリティだが、少し繋ぎが不自然な気もしてしまう。
#7 フルートを使ったりと不思議な雰囲気が漂うスローな曲だ。中盤美しいメロディが存在するが全体的にプログレッシヴ色が強く11thに入ってても違和感がない曲で今後の彼らの方向性を示す伏線とも言える曲である。
歌詞
諸事情により今回は省かせていただきます。
10th Heritage (2011)
46点

ここにきてオーペスは大きな変化を遂げる。プログレッシブデス兼メロデスだったオーペスが1970年代のようなプログレッシブロックになり、別のバンドを聴いているような感覚に陥る。凶暴性は皆無で、だからと言って7thのような切ないバラードや美しい退廃的な曲も皆無で完全に別の宗教的な世界を作っている。往来のファンの中には困惑して離れるものも多くはないはずだが、さすがはオーペスで完全なプログレバンドとして生まれ変わっており、クオリティはかなりのもの。70年代のプログレファンにはグッとくるものがあり、また往来のオーペスファンも楽しめる別の芸術性がこの作品からは感じられる。飢饉などで宗教に頼るようになった人々の欧州の世界が見えてくる。
「ジャケットの説明」
ミカエル曰く、地中の木の根の部分は過去のデスメタルを意味したものらしい。オーペスはそのデスメタル界から脱却したしましたよ、ということで地上にオーペスの木がにょーんと生えている。木から落ちている顔は脱退するメンバーであり、下に溜まった骸骨は過去に去っていったメンバーを意味する。(恐ろしい扱いだな笑) 奥で燃えている街はマンネリを意味するらしい。マンネリから逃れてきた民がオーペスという唯一無二の木(音楽)に辿り着く感じか。行列の中に4thの主人公マリンダもなぜかいる。
とにかく面白いジャケットだ。
おすすめは1、2、4、5、6、7、9
1.Heritage A
2.The Devil's Orchard A
3.I Feel The Dark C
4.Slither A
5.Nepenthe A
6.Häxprocess A
7.Famine A
8.The Lines In My Hand C
9.Folklore A
10.Marrow Of The Earth B
各曲レビュー
#1 バッハ的な美しいピアノのインスト。一気にこのアルバムの世界に引き込まれる。
#2 キングクリムゾン的な始まり方をする完全プログレソング。この曲を聴いた瞬間オーペスの変貌っぷりに腰を抜かしただろう。
「こんなのオーペスではない!半世紀前のどこかのプログレバンドだ!」と思う人もいれば、「ああ、オーペスが目指していた世界はここだったのか」と感激する人もいるだろう。
#3 これまた不思議な世界観の曲。少し弱いか。前半は宗教画の中を連想させるアコギで後半になるとグニョグニョプログレッシヴヘヴィダークパートに入る。ダッフィー
#4 まさかのシンプルハードロックソング。いつの時代のバンドを聴いているんだ!?て感覚に陥るが歌メロは素晴らしくさすがオーペスといったところ。
#5 前半は静寂ジャズパートで後半になるとぐちゃぐちゃプログレッシヴタイムが炸裂する曲。歌メロが哀愁あって素敵。
#6 言葉では説明できないほど奥が深い曲。癖のない芸術的な展開が心に刺さる。切なくそしてドラマチックな構成の曲だ!
#7宗教画ちっくなイントロから突如哀愁いっぱいのパートに突入。しかしその後はミステリアス展開に突入する中々に得体の知れない曲だ。ディープすぎて普通のメタラーが聴いたら頭がアレになりそうだ笑
#8 超プログレッシヴ曲。短いが複雑なドラムに脳をやられる。終盤加速してハードロック調になる。
#9 スウェーデン民謡調のイントロから始まるこりゃまた複雑芸術ソング。。かと思いきや後半怒涛の展開をみせる曲。ギターソロなどとにかくアップテンポした後半がかっこいい。
#10 ラストはアコギの静かなインストで終わる。やはりどこか演歌っぽさもある。。
歌詞
暗闇に忠誠を誓い黒曜石の道を辿れば、冬の手綱が緩み愛する人の道標となるだろう 盲人を導き太陽の下へと続く道を探すうちに目にした数々の標識は絡み合い、最後に現れた標識には俺の罪の一切を許すと記されていた 神は死んだのだ
悲劇役者の姿は遠きにありて 信用というしがらみを解き、欲望という衝動に目を向ける 夜の霊よ、偽りを唱えよ 道は長く、曲がりくねったまま 窓にさす陽射しはヴェールを被ったままで雨は止むことがない
夏は過ぎ愛は枯れてしまった 渦巻く興奮の様相がここに幕を開ける 絶望に導かれ、血を流す心 身動きの取れない鳥さながらだ 献身の誓いは破られもう戻ることはできない
降りしきる雪の中、希望は俺を見つけられないだろう 彼女は俺の夢に取り憑き邪念の火に油を注ぐだろう そしてその邪念に俺はそそのかされるんだ
一雫の血で繋がれた生命 神を遠ざけたいという今にも消えそうな願い この幻惑的な夜は終わりなき冬のよう 大地は足元で呼び月は高く昇る 父よ、そして嘘をつく人よ 忘れ去られた季節がぬかるみに消えていく
果てしない空虚の中、漂う霊になるのだ 理由など無視して
誰にも読まれることのない真実を描き出す高架線下の落書き 操り人形たちの政府は異なる信条に目を眩まされている
夜の帳が降りたら 夜の帳が降りたら 父なる人が待っている 降りしきる雨の中、家を後にして罪の意識と恥辱の海の中へ沈んでいく
11th Pale communion (2014年) 49点

前作と同じ完全プログレ路線だが、今作ではどこか、かつてのオーペスにあった冷たい北欧感溢れる哀愁のある作品になっている。しかし相変わらず難解な構成になっており、前作感じた宗教臭も漂っている。
おすすめは1、2、3、5、8
1. Eternal Rains Will Come 特A
2. Cusp of Eternity A
3. Moon Above, Sun Below 特A
4. Elysian Woes A
5. Goblin B
6. River B
7. Voice of Treason B
8. Faith in Others 特A
各曲レビュー
変態的イントロから始まるが、その後は芸術的な歌メロパートに移る。前作のような不思議な癖がなく美しいプログレオーペスソングを聴ける。
コンパクトな曲でどこか怪しい雰囲気のある宗教的プログレソング。オーペスにしては構成が複雑ではなくわかりやすい曲。
大曲であり、アコギの芸術パートとプログレッシヴパートが交互にやってくる感じの曲。終盤などに心をえぐってくる名メロディーが詰まっている。このアルバムの中で一番好きな曲。
ここで一転、7thに入っていてもおかしくない美しいアコギのプログレバラードソングが始まる。この曲を聴き過去の(芸術面の方の)オーペスはまだ生きている!と確信を持てたファンも多いのではないのだろうか。
怪しさいっぱいのインストソング。前曲との対比がすごい上級者向けの曲だ。
癒し度マックスなアコギから始まる爽やかソング。中盤に味のある芸術パートが入り、その後は複雑怪奇プログレオーペスワールドになる不思議な曲。
ミステリアスなインストから始まる長めの曲。終盤になりようやく、ツーバスドコドコタイムからの美メロが始まる。静と動の繰り返し職人だったオーペスが最近は、ドロドロターンからのラストは芸術パートというパターンの使い手になった印象。
ラストにふさわしいプログレバラード。キングクリムゾンの名曲を彷彿とさせる悲壮感だ。
歌詞
永遠の雨が降るだろう 待つなとお前は言った 永遠に待てる自信がない限り、俺たちには時間がないから過去に慰めを見出せ
裏切りと死の世界に秋の子供が生まれた
そして断絶が彼女を氷の地へと連れ去り、喪失感と永遠の悲しみを植え付ける
頭上に月、足元に太陽を従えて 太陽に肌を晒した覚えがない 内側でささやく悲しみの奴隷だ 悲しみの川で俺は溺れていく 夏が急いで死んでいく 水面には波紋が広がるだけ
朝になり残るのは未来の記憶 玄関で待つ友がいた 今はもういない
俺を沈黙の秘密の奴隷にしておきながら行くなとお前は言った 夏の名残の中で全て死ななくてはならない 行く先には火の道
霧は水面で眠り、心には冬が隠れる 愛の亡霊は笑いで満たされ、俺の歩みをからかう 憧れは覆る 残されたのはここに広がる空虚と失敗の残響のみ
青春の墓場が待ち構え、人生は重荷になってしまった 太陽を待ちながら抑圧された絶望の堂々巡り 俺たちの喪失は文章で定められている 十字架を信じてはいなかった
12th Sorceress (2016)

より深く、ディープな領域に行ってしまったオーペスの12thアルバム。前作よりも難解に、そしてヘヴィでダークになった感じだ。
70年代プログレからの影響に加えてユーライアヒープなどのハードロックからの影響も今作からは感じられ、更に未開の領域にいってしまった感じだ。サイケ感も強くてとっつきにくさは過去1かもしれないが聴けば聴くほど味がでてくる作品だ。コンセプトアルバムではないがギリシャ神話に登場する冥界の女王ペルセフォネや女妖術師などが登場する。
1.Persephone A
2.Sorceress B
3.The Wilde Flowers B
4.Will O The Wisp A
5.Chrysalis A
6.Sorceress 2 A
7.The Seventh Sojourn B
8.Strange Brew A
9.A Fleeting Glance A
10.Era 特A
11.Persephone (Slight Return
各曲レビュー
めちゃくちゃ美しいアコギワルツ名インストから幕を開ける。子供が帰る愛のチャイムはこれにしてほしい。過去最高の出だしではあるがこのあと、、笑
ここでまさかのぐちょぐちょプログレッシヴぬるぬるスロー曲。さすがの私もこの曲は深過ぎて理解が追いつかないレベルである、、笑 プログレファンか長年オーペスを追い続けるているファンしか受け入れられないタイプの曲だ笑
続く3曲目も不気味なプログレッシヴ調ソング。スローでドロドロした展開だ。終始クリーンヴォイスなのがかえって怖い曲調だ。後半の静寂パートはオーペスらしくて良い。
ここで唐突に7th時代のようなアコギバラードソングが入ってくる。CMでも流せるレベルに聴きやすい曲で風を感じることができ気持ちいい。ただあのドロドロ2曲の次にこれがくるため浮いているトラックでもある。
今度は8th時代を彷彿とさせるアグレッシブで攻撃性のある曲だ。(ただし全てクリーンヴォイス) 後半からガラッと曲調が変わり、哀愁ターンに突入するがここが素晴らしい。オーペスにしか出せない哀愁を堪能できるので後半から終盤にかけてのとこはぜひ聴いて欲しい。
不思議な浮遊感ある短いバラード風の曲。アコギとフルートが異世界感を出している。
なんか休憩タイムみたいなトラックだ笑
怪しさ満点 終盤までヴォーカルが入らないという謎構成であり半分インスト曲でもある。ディープすぎる曲調に脳をやられる。
退廃的なダークワルツバラードかと思いきや、突如テンポアップしたりする超プログレッシヴソング。これも相当ディープな曲であり、ついていくのが大変だ。ただ序盤や終盤などはオーペスならではの魔力があり良い。
ドラクエ的ファンタジー世界の宿屋みたいな曲調で幕をあける。
この曲のPVにでてくるキャラがカオナシにそっくりでちょっぴり日本でも話題になったとかならなかったとか。静かなピアノのインストから始まるも、この後スピーディでアグレッシヴな曲調に変わるイケメンソング。
途中で展開が変わったりせずこの疾走感で終始駆け抜けるインパクト大な曲だ。リフは重いが歌メロは哀愁たっぷりでまた新たなメタルオーペスを味わえる名曲。
歌詞
私の心の中の愛しい名前 一瞥が始まりだった 私が今も持っている失くした言葉 私が作りあげている哀れな欺瞞
手に短刀を持ち許しを請え お前の死の種を薪き、死にかけた地を刈り取れ
太陽は空高く、私は顔を背ける 永遠の波と僅かな砂 服従の殺戮への願望 高く上がる炎の目を晦ますような光
時はお前が死ぬ時だけ癒してくれるものだ お前は自分の魂が欺瞞と嘘でできた銀の天秤で測られていることを今知るだろう
最も遠い日に 幽霊のために書かれた詩はため息と共に消えていく
月光からの日の出 お前は褒美としてかつては汝のものであった荒凉とした夜を勝ち取った そしてお前は自分自身の運命と和解した
海へと溶けていく氷 逆流してくる川 闇に口づけすることを恐れるな
お前の目の中の荒れ狂う海はお前の変装を暴き出し残すべき平穏を授ける
公園での午後の散歩 私は暗くなるまで日陰にいる 私は妥協を信条としている 迷う信者の一群がみえる 私の凝視には永遠の夜がある 雨を通じた声が私はここにいると告げる ペール越しの一瞥が私の涙を誘う
幸福の追求 嵐がやってくると無力の邪神が道を開き、そして譲った しかし私の心から消えつつある 後ろで待つもう1人の「私」などいない
悲劇的なエピソードの中に、死を迎える時に、私たちが雨に踊る時に、再び刻印が現れる 多くの叫び声が起こる時、無力に私は取り残される 憎しみの海の中、私は盲目になる 嵐がやってくる 私は隠れる 窮乏の日々、理性が道を誤らせる
不穏な優雅さと共に月日は過ぎた 過去の妄想は跡形も無く沈んだ
13th In Cauda venenum (2019)

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