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奥田ゾンダーランド

カビの家 部屋の隅まで黒々と ナムル鳴きつつ 秋風をきく

近所にとてつもなく巨大な豪邸がたった。(数年前くらいだが、、)

なんだYOSHIKIとかディカプリオが近所に越してきたのか?てくらいにイカした豪邸だ。


しかしそこは昔、中学時代にナムルという同級生が住んでいたふるーい平家群だったのだ。(中学時代はそこを貧民街というクソ失礼な呼び方をしていた)


ナムルハウスのことを突如思い出した私は部屋の片付けを頑張ろうと思った。


【なぜナムルというあだ名なのか】

そいつはとにかく目立たない子というか小動物みたいだった。。歯を何年も磨いてなくて歯がボロボロヘロイン状態だったことくらいしか特殊能力がない。そんな彼は中学1年の暮れにあるブームを巻き起こした。給食のメニューを変なトーンで言えばエロく聞こえて面白い、というネタを編み出した。「ナムル」から始まり「ほうれん草としめじのバター醤油和え」や「彩野菜のスープ」など数々の名言を残し一世を風靡した。しかし、ナムルが「ナムル!」と叫ぶ真似を俺がし始めてからナムルはネタを封印し再び陰の世界へと帰っていってしまった。


ある日、ナムルハウスへ行く機会があった。

仲が良いわけではなかったがせっかくなので行くことにした。



先に言っておくがナムル家は貧乏というわけではではないのだ。

毎日親から金を貰ってゲーセンで全額使っているため経済的に余裕がある?家だ。


家に到着。

おお、、懐かしの昭和を味わえるサザエさん的ハウスだな、なんて思いながらチャイムを押す。

なんと鳴らない!

中から入って良いよとの声がかかり、入口を開けようとするも開かない!!

どうやら玄関はゴミで埋め尽くされていて家に入る際は縁側の窓から侵入しなければならない厄介な家だったのだ。

窓から入り、私は沈黙した。

足場が80c㎡しかないのだ。その部屋はゴミで埋め尽くされており、自由に動けるスペースはほとんどない。死刑囚の部屋なんてものじゃない。

そのわずかな足場にナムルが座りバーチャファイターを楽しそうにやっている。

床には粉々になった「おっとっと」が散乱していてその横を楽しそうに大量の虫が行進している。

どうやらここがリビングらしい。


隣にももう一つ部屋があるが、そっちもごみの山でわずかなスペースにディメンター的な布切れ布団が一枚隠れている状態だ。どうやらそこがパパの部屋らしい。


ションベンをしようとトイレに入ると便器がなんとまっ茶色なのだ!!どうすりゃこうなるんだ!

できねえええよ!!!


洗面台の鏡は真っ白で、歯ブラシはカビで真っ黒だ。(ようやく歯の謎が解けた。。)


おそるおそるお風呂を覗くと壁が崩壊しておりむき出しのパイプが凄まじい。これガス爆発か何か起こる寸前なんじゃないかってくらいの惨状だ。

かま爺の住処というかグレートベイの神殿というか、、


どこで寝てるの?

「父さんはとなり。母さんと俺はここのこたつ。」

ごみを掘るとこたつがでてきた。


これが思い出して書き起こしてみたナムル邸の見取り図だ!

途中親に電話で「金よこせくそばばあ」と言いゲーセンの費用を作る地獄絵図もみせられる。(普段はコソコソしているキャラなのに親への態度は凄まじい...マジで謎だ) この電話は日課らしい。

そんなに金があるならローソンで歯ブラシ買ってきなさいよ...



今はもう亡き恐怖の館の横を通り、ふと考える。


あの家もしっかり掃除をすれば普通の家なのだ。

住む人によってこうも変わるのか。自分も人のことを言えないくらい整理整頓ができず部屋も日に日に散らかってきている。

せっかく家庭環境も良く、家も広いのに自分のだらしなさがこの家を第二のナムルハウスへと変化させようとしていることに恐怖心を覚えた。


自分のだらしなさを紹介しよう。

これが高校時代の机だ!

左にあるストーブと手前にある棚も私物化し、みんなからは領海と呼ばれていた。ちなみにストーブのことは竹島と呼び、手前の棚を尖閣諸島と呼んでいた。尖閣の下にある段ボールを私物化し、北方領土も作ろうとしたがそこは先生に止められた。


もはや隔離状態だ。


そしてこれが高校時代のロッカーだ!!

雪崩が起きている方が無論私のロッカーだ。

ちなみに空っぽのロッカーにオバマのマスクが入っている奇妙なロッカーは高校一やばい男であり私と共に3年G組のイスラム国と呼ばれ迫害を受けていた「小松」のロッカーだ。教材をなにも置いていないこのロッカーも大問題だと思うのだが、、。


高校時代キンタマみたいな頭をしたおじいさんの英語の先生に注意された。

「ミスターオクダ 机ノ乱レハ、心ノ乱レ」


今その意味がわかった。部屋の汚さは心をも汚す。


ナムルの家庭環境の悪さはあのゴミから来ているのだ!中学時代は「やばいやばい!」とネタにしていたが俺はもうあの家を笑わない。明日は我が身だ。


ゴミに埋もれた収集品や思い出のアイテムをみると凄まじい罪悪感がわく。

大切なものが自分のだらしなさによって崩壊していくのにはうんざりだ。


部屋の片付けを極めることを決心した私は秋風の中、旧ナムルハウス邸を後にする。

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